伊藤セツ研究BLOG

このブログは、当初は、勤め先の教員紹介に付属して作成されていたホームページ。定年退職後は、主に、教え子たちに、私の研究の継続状況を報告するブログに変えて月2-3回の更新。
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東日本大震災5年と天野寛子フリー刺繍画/ししゅう高田松原プロジェクトに思う
2月23日、横浜会場展に、ご近所の味噌づくり仲間と行き、作品をゆっくり観て、久しぶりに天野さんとお話ししました。<同じ職場で、研究や教育に苦労したけど、今思えば、あの時は楽しかったね。厳しさの中で鍛えられた。最終講義を40分二人で創造したのは傑作だった!>などなど。そして、天野さんの今の仕事は、研究の仕事と共通点が大有り、いや、同じだとの結論に達しました。
構想段階での長い思考。手順を熟慮する。摸索しながらの方向転換や思わぬ方向への発展。仕事の細かさ。丁寧さ。試行錯誤。どの素材(布、色、糸の種類)を選ぶかの選択。仕事にかける時間。継続力。持続力。完成に至るまでの気の遠くなるような「切りのなさ」。どこで「切る」と判断するか。必要な根気。直接的仕事対象にかけるほかの、もろもろのこと。体力と気力。そのために日常から鍛えておかなければならない生活習慣!体力づくり。

天野さんの仕事は、他の誰にもできない仕事です。その発想、技術、芸術性、指導力(師の一はけ)、社会的・歴史的意味、参加者のエンパワーメントに至るプロセス。総合的な意味で「思想性」も要求されます。一夜の思い付きでできる仕事ではない。これまでのすべてがかかっている。

ひるがえって私の仕事もそう。誰にでもできるような仕事を今する意味はない。私でなければ、決して誰もしないであろうように、研究を紡がなくてはならない。
今、まだ何度目かの年譜・年表への手入れをしていますが、時間をかければかけるほど浮き上がって見えてくるものがある。それは、「発見」です。その文章化には何度も手を入れなくてはならない。それにいわゆる「養生」(ようじょう)という放置も必要。とにかく時間がかかる。人生の終わりという絶対的締め切りに間に合わないという恐れ、その絶対時間との勘案で、どこで「切る」かも決めなくてはならない。

私は、研究とは別に、facebook上に書くような生活上の側面を持ち、どこにも書かない別な世界をも生きている。
この1月―2月、特別多忙でした。これから先facebook上に書くような多忙さがそれほど減るとは思われません。
1−2月、細切れ研究をとにかく続け、年表・年譜を少しづつ埋め、今集中的に、年表をタイムラインのように、多様なポイントから100年走らせることを何度もやっています。

カーソルが上下にかなりの速度で何度も走ります。そして横にカーソルを走らせると、他のポイントと関連付けられて、書こうとすることがあふれます。その時間を何とか3月に確保したい。それが今の切なる願いです。
3月、4月、雑草が出て、時間が奪われないように、庭に白い石を敷き詰めました。
我ながら、反自然的なことをやっているといささか、雑草の生命力にたいし、かなり良心が咎めます。

下の写真のようなこんな感じです。まるで雪が積もったよう。それに木も根こそぎ切って、庭は藪から砂漠に近くなりました。

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| 近況 | 01:30 | - | - |
多摩ニュータウンでの1985年生活時間調査の記憶と「平和・くらし・環境 八王子学術文化の会」
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今回の八王子市長選挙に関わって、八王子市民として様々の事を学び、多くの人々と知り合いになり、考えるところ大でした。

無所属候補を立てて、選挙の確認団体が「平和・くらし・環境 八王子市民プロジェクト」、私がそのプロジェクトに参加する「いがらし仁さんを応援する八王子学術文化の会」の連絡係をつとめたことは、すでに書いてきました。

「プロジェクト」は、選挙運動の方針の参考にするために、告示前と告示直後、インターネットを利用した「市内意識調査」を、調査会社に委託して実施しました。

私は、八王子の地勢にも関心を持ったこともなく、八王子市民であるという意識もないまま、30年以上、八王子市民であったわけですが、選挙に関わる「意識調査」をやるとなって、はじめて1985年に、多摩ニュータウンで生活時間調査を、9名の共同研究で実施して、私と天野寛子氏との共編著として1989年に光生館から出した時の経験が、むらむらとよみがえってきたのです。
書名は、『生活時間と生活様式』でした。多摩ニュータウンは、その著書にも書いてある通り、八王子市、町田市、稲城市、多摩市の4市にまたがった地域を総称しているものであったわけですが、当時、調査協力者が、どの市に属する多摩ニュータウン居住者であるかは関心外だった、というより、研究の目的から外れていました。市政とのかかわりということが、私たちの意識の外にあったのです。

あの30年前の生活時間調査から得た認識は、とても重要なもので、同一世帯の夫妻の生活時間をタイムテーブル方式で調査したため、生活時間のジェンダー差が明確になり、私たちが主に報告の場とした日本家政学会や国際家政学会、その他生活時間研究者の間で一定の評価も受け、日本家政学会賞もいただきました。家政学的研究としては画期的であったとは思います。

今回の選挙で、票田が多く、人口密度が高い、多摩ニュータウン在住八王子市民の、八王子市政への関心の薄さが地域的特徴として問題になり、憲法9条の会事務局長の小森陽一氏をむかえて候補者五十嵐仁氏との「ニュータウンで民主主義を考える」という、興味深い対談の夕べも企画されましたが、投票率を上げることに目立った寄与も見られませんでした。今後の課題は重大です。
今、多くの大学は、国公立・私立を問わず、地域との関係を重視しており、交流も盛んです。

私は、今、自分の別なテーマに集中していて20以上もある八王子の大学が、八王子について何を研究し、市民とどういう交流をしているかについて無知のまま、選挙運動の中に入って行きました。そのことを反省はしています。こうしたことは「・・・・八王子学術文化の会」が担うべき分野ではなかったのか、つまり、30年前とはいえ多摩ニュータウン調査に関わったものが気づくべきことだったのではないかということです。それに多摩学会とか、八王子大学コンソーシアムもあります。

今回は、自分が住む狭い地域の事は7年間意識してきたとはいえ、心は自分のテーマの巣のなかにあったところを、いきなり、竹ぼうきで追い出されて、やみくもに、選挙運動に飛び込んでいった、不用意な、なにかの「動物」みたいと思いますが、「それもあり」というのが人生というものでしょう。

昨年は、これも思いがけなく、日本科学者会議の女性研究者運動にかりたてられ、それはその限りで一応まじめに役割を果たしました。
今年はまたこういうことで、正式名「平和・くらし・環境 八王子学術文化の会」(代表:五十嵐仁氏、副代表:林洋子氏、高野恭一氏)を選挙の後に残し、その運営委員に行き掛かり上なってしまいました。

今後「自分のテーマの巣」のなかと、この会と、これまでの地域活動をやることになります。

選挙のために、facebookにも手を出してしまったので、ブログの方は、できるだけ「自分のテーマの巣のなかでの営み」を中心に、書くことにします。

(上の写真は、金曜日の散歩道の、道端の花)




 
| 近況 | 00:24 | - | - |
やはり細切れ研究ではだめ、なのですがー
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こういう自然もすぐ近くにあります。
やっぱり、細切れ研究ではだめですね。この1月、一日も欠かさず、日記に赤字で研究のこと何やら書き込みましたが、書かなかったよりはましという程度です。でも一日も欠かさずというのは、ただ「恐れ」と「意地」からくるものでしょう。

今回市民運動と接して選挙運動をやっていて、今は離れているけど、かっての私の中心的研究だった「家計・生活時間・アンペイドワーク」に新たな光にあてて見直さざるを得ませんでした。いつも意識されました。
このキーワードには、まだ手掛けられていない、発展させたいオリジナルな個別テーマがどんなに潜んでいることでしょう。
以前には見えなかった、気がつかなかった理論化すべき論点がたくさん残されています。
つまり「生活研究」と言いながら、これまでかなり一面的・部分的であったことを反省させられるのです。
しかし、このテーマに戻っていく時間は、私にはすでにありません。いや、今のテーマを終えて研究寿命が残っているならあるかもしれませんが・・・・

今、日本の明治以降の女性運動を取り上げていて、読むべき資料・やるべきことの多さにたじたじとし、その多面的な背景の中に、山川菊栄という人物を置こうとして、そう簡単ではない事が自覚させられるのです。
膨大な年表をつくって、縦横につなげて・・・・

そして、このテーマは、今回の選挙と今後の日本の情勢の変革にもつながる根本的問題と無関係ではないどころか、私たちの前に突き付けられている課題にこたえるための実践的な研究でもあるのです。

「八王子学術文化の会」は、この選挙で学んだ多くのことを基礎に、さっそく活動を開始しなくてはなりません。
私も運営委員としてその一端を担います。
今日は、事務局長がメーリングリストを立ち上げ、それへの加入・確認から始まり、夕方までには、流れるようになり、一息つきました。「地域活動と研究との統一」とも違った局面がこれから展開されるでしょう。
 
| 近況 | 21:43 | - | - |
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